機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-

 遅ればせながら観てまいりました。まず結論から述べさせてもらうと、とても面白かったです。ビックリするくらい、文句のつけようがない作品。一部では「これはガンダムでやる話なのか?」との声もあるようですが、そんなのは15年前に済ませた議論です。今更、問題にする気には(少なくとも僕は)なれません。それくらい、SF映画としては真っ当な展開、というか、ガンダムというロボットアニメをうまくファーストコンタクト物のSFに落とし込んだものだな、感心してしまう映画でした。ガンダムという存在を象徴的に捉えなおし、ガンダムで「沈黙の艦隊」をやった1期TVシリーズ。統一政権の下で弾圧者と抵抗者の相克という、いつものガンダムと同じようなことした2期、それぞれに見所があり、同時の不平や不満もある内容でしたけど、それら全てがこの完結編へ至るための壮大な前振りであったと思えば、意外なくらい納得してしまう自分がいるのです。確かに、1期の頃から「来たるべき対話」なるキーワードが本編中に散見されており、異星人(あるいは異星体)の存在は匂わされていましたが、まさかアニメ本編の枠内で第一種接近遭遇するところまでちゃんと映像化することになるとは、予想外でありました。
 今回の敵役(という表現は的確ではないんですが、まあ便宜上そう呼びます)である異星体ELSの設定は、クラークのSF小説にでてきそうな感じであり、そんなに目新しいものではありませんが、寄生獣(パラサイト)かT-1000ターミネーターよろしく自在に姿を変えては手当たり次第に人工物と同化し、あまつさえ人類さえ呑み込まんとして迫ってくる姿は、映像で見せられると相当にインパクトがあります。対する人類、一丸となって脅威に立ち向かわんとする姿はさながら「妖星ゴラス」あたりのパニックSFのようでもあり、川井憲次のBGMが流れる中を政府の放送を不安そうに見つめる市民の姿を映したカットは「パトレイバー2」を髣髴させます。連邦宇宙軍の艦隊が迎撃すべく配置につくシーンでは嫌が応にも胸の高鳴りは最高潮に。僕の脳内では「怪獣大戦争マーチ」(http://www.youtube.com/watch?v=lvdb6zTLNik)が流れていました。
 それだけでも相当に盛り上がってるわけですが、ダメ押しとばかりに、TVシリーズで敵味方に分かれて刃を交えたライバルたちが、主人公たちと共同戦線を張っちゃう。胸が熱くなるじゃないですか。そして地上では、彼らの送り出した人たちが、そして彼の戦いを見守る人々がいる。正直、TVシリーズ(特に2期)ではあんまり上手く機能しているようには見えなかったグランドホテル方式が、この映画ではかなり上手くいっているように感じられます。(まあ、話の構図が単純化してるからなんでしょうけど。)そしてなにより、これだけ盛りだくさんな内容で、内容が破綻を来たしてないんだから、すごいわけです。上記のように、ちゃんと初志貫徹してる。シリーズ開幕当初に掲げたお題目を、愚直なくらい真っ当にラストシーンに結実させてみせている。立派なものです。スタッフの皆さんには素直に賛辞を送りたい。いやはや脱帽です。