北北西に進路を取れ

北北西に進路を取れ [Blu-ray]

北北西に進路を取れ [Blu-ray]

 例によって午前十時の映画祭で観賞。ご存知、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の作品です。些細な人違いから陰謀に巻き込まれ、殺人の容疑までかけられてしまった男が、自分の命を狙う謎の組織や警察に追われながらも、真実を求めて東奔西走するといった趣向の映画。ヒッチコック作品、結構たくさん観たような気がしていたのですが、フィルモグラフィーを確認したら実際に観たことがあるのはたった三本だけなんですよね*1。なんでこんな勘違いをしていたのかと考えてみたら、おそらくコメディ映画でのパロディや、映画解説の書籍、TV番組などで見た知識で「なんとなく観たつもり」になっていたのでしょう。「サイコ」のシャワーシーンとか、あのショッキングな音楽と犯人のシルエットを、幾度となく目にした記憶があります*2
 さて「北北西に進路を取れ」です。今日の観客の目からすると少々ご都合展開に見える部分も多いですが、映画が製作された時代を考えれば、それをあげつらうのも少々酷というもの。文字通りアメリカ中を又にかけて撮影した映画のスケールの大きさ、長距離列車やホテルの個室という密室で交わされるロマンスあるいは駆け引き・騙し合い、有名なトウモロコシ畑での複葉機の追いかけっこ、ラストのマウントラシュモアでの格闘シーンなど、いかにもヒッチコックらしい多種多様なシチュエーションを素直に楽しむのが正解でしょう。しかし、136分という尺はどうにも長すぎる気がするのも確かです。過去に観た「バルカン超特急」や「三十九夜」(いずれもイギリス時代の白黒作品)は大体100分弱の話で、最後までスピーディに物語が展開したので、あまり細かなツッコミを入れる気にもならなかったのですが。「バルカン超特急」での列車内ミステリー、「三十九夜」の逃走劇というように、それぞれの一発ネタだと気にならなかった部分が、いろんなシチュエーションを一度にぶち込んだ「北北西に進路を取れ」では食い合わせの悪さのような形で浮かび上がってしまった気がするのです。
 あるいはカラー作品だから、現代のサスペンス映画を観るのと同じ目線でこの作品を観てしまったのかも知れません。モノクロの作品だと、否が応でも、現実の世界とは切り離して作品を観ることができますから。

*1:「鳥」、「バルカン超特急」、「三十九夜」の三本。

*2:でも、パロディした作品の具体的なタイトルって思い出せないんですよね、不思議なことに。