オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 11 マイマイ新子と片渕須直の足跡」(2)

片渕オールナイトのイベントレポート、2回目です。今回は上映作品の中から前半の3作品の感想を、監督の作品トークに触れながら、簡単に紹介してみたいと思います。

 イベントの題目からするとこれがメインのはずですが、今までさんざん他所で話題にしてきたたためか、今回はマイマイの話は少なめでした。その分つっこんだ話題が聴けて、小黒氏は本作の絵コンテ本をなかなか出せない理由を明かしてくれましたが「これはオフレコね」ということだったので、詳細を明かすことはできません、残念! その代わりというわけでもないのでしょうけど、リクエストサイト「たのみこむ」の方で、マイマイの絵コンテ本の刊行を求める署名がはじまったとの告知がありました。「皆さん、是非署名してくださいね」とのことなので、署名しましょう。僕はこれからします。それとは別に、会場では「マイマイ新子の関連書籍が出るとしたらどんなものを希望しますか?」とのアンケートが実施されてもいましたね。僕は「制作記録全集的なメイキング本が欲しいです」と書きましたが果たして実現するのでしょうか、するといいなぁ。

  • 「名探偵ホームズ」

 二番手はいわゆる犬のホームズですね。イタリアとの共同制作で、パイロット版的な数話が宮崎駿によって監督されたのは有名な話。上映された2本は「風の谷のナウシカ」公開時に併映作品として完成されたもので片渕氏は脚本として参加されています。権利関係の問題で、一部のキャラクターの名前やキャストが後のTV版とは違っています。面白いのが、エンディング終了後に「本作はコナン・ドイルの作品とは関係ありません」とのテロップが出るところ*1。ホームズの中の人もおなじみの広川太一郎ではなく柴田光彦という人ですが、なんと当初は野沢那智はどうかとの案もあったんだとか。その頃野沢氏の事務所だか劇団で出火騒ぎがあり、収録どころではなくなり、話は流れてしまったそうですが、実現していたらどんな感じになっていたんでしょうね。さて、上映された2本は「青い紅玉(ルビー)の巻」と「海底の財宝の巻」ですが、初見かなと思っていたら、どうやら過去に観た記憶があります。おそらく夏休みか冬休みのBSアニメ特選ででも視聴したのではないかと思われます。えらく久しぶりに観返してみたわけですが、今回気づいたのが何気に「ミリタリー志向だなぁ」、ということ。監督の宮崎氏も、脚本を書いた片渕氏もミリタリー趣味の人として有名ですから別に驚くことでもないんですけど、そういう色を出しつつ、普通の観客にも楽しめるものを作るバランス感覚は「流石だ!」と思いますね。でも「深海の財宝の巻」で、イギリス海軍の戦艦が登場するシーンで日本海軍の「軍艦マーチ」*2が流れたのにはちょっと苦笑しました。まあ、これが不思議とマッチしてるんですけどねぇ。

これまた海外の小説が原作らしいですが、もちろん僕は初見です。イギリスを舞台に、子供の願いをかなえてくれる砂の妖精サミアどんと子供たち交流を描くというお話で、ものすごく分かりやすい表現をするならば「ドラえもんをはじめとした藤子アニメ」ライクな世界観の作品といったところでしょうか。……なんですけど、主人公のサミアどんのキャラがぶっとんでるせいか、全然ハートウォーミングという感じではなかったですね。この妖精さん、一人称「わし」だし、性格は完全にオヤジそのものだし、感情を昂ぶらせるとカタツムリみたいにメンタマ飛びだして怖いし。15分のエピソードを2本みただけなんで、たまたまこの回がそうだっただけなのか、毎回そうなのかは分かりませんけど、怪作であることは間違いないと思います。
 「うしろの正面だあれ」と「アリーテ姫」についてはまた後日。(続きます)

*1:TV放映版のOPでは堂々と「原作:コナン・ドイル」と表記されているんですけどね。

*2:正確には「軍艦行進曲」。火垂るの墓の観艦式のシーンでも流れてるあの曲です。